第12章 今夜は朝まで離さない/中編
居室と風呂を行き来するための引き戸がゆっくりと閉まり、部屋に一人になる。
手持ち無沙汰になった俺は、風呂場から聞こえる掛け湯の音や可愛らしい鼻歌に そっと耳を傾けた。
あの莉菜さんが。
俺の城(ワンルーム)で。
風呂に入っている……
「…………」
何やら胸が早鐘を打ち始めた。
莉菜さんが出てくるまで、拭き掃除でもして気を紛らわせよう。
ーーー
部屋全体が磨き上がる頃
カラカラと控え目に戸が開く音がして…
「佐助くん お風呂ありがとう!いいお湯だったよ」
声の方向に目をやると、俺が貸した墨色の甚平を身につけた莉菜さんの姿があった。
湯船でよく温まったのか頬の血色は良く髪はしっとりと濡れ、
石鹸のいい香りが、俺の方にまで漂ってくる。
「お帰り。お風呂、使いにくくなかった?」
「うん 大丈夫だった!あ、あとこれ、貸してくれてありがと」
礼を言われ 改めて全身を見てみると
膝まではあるだろうと予想してた甚平の丈は意外と短く、太腿の真ん中までしか長さがない。
すらりと伸びた綺麗な脚に釘付けになり、心臓がドクッと音を立てた。
ここは女性がブラジャーやショーツを付ける習慣が無い時代。
ということは 恐らくあの甚平の下は何も……ーーー
「そんな着物しかなくてすまない。肩幅とか、だいぶ大きいんじゃない?」
「ん〜、少し大きいけど… でもいつも窮屈な着物ばっかりだから こういうダボっとしたのって楽チンで嬉しい!」
動揺を隠しながら話す俺に対し、横に腕を伸ばして ダボダボ具合をアピールする莉菜さん。