第12章 今夜は朝まで離さない/中編
その仕草を見た瞬間。
カラダに電流が走り、突如このまま押し倒してしまいたい衝動に駆られる。
…!!
そうか、これこそが巷で話題の『彼シャツ』シチュエーション…!
(※厳密に言うとこの場合は『彼甚平』だけど)
『彼甚平』も俺的にはすごくイイと思う。
世の男性諸君に全力でお勧めしたい。
「…? 佐助くん?」
「スー… ハー… スー… ハー…」
莉菜さんに気付かれないよう、静かに深呼吸を繰り返す。
ともかく 今はまだ駄目だ。
今日は沢山 走ってかなり汗をかいたし俺も風呂に入らないと。
無心になれ、俺……
………
……
…
「……ーん。…おーい、佐助くーーん」
どこか遠くの方から呼ばれてる気がしてハッと我に返る。
慌てて焦点を合わせるも さっきまで目の前に居たはずの莉菜さんの姿は無く、
代わりに真っ白な長い布が垂れ下がっていた。
なっ、
この白くて長いのは一体。
いや それより莉菜さんはどこに…!
「ねぇ、この濡れた手拭いは どこに干せばいい?」
「!」
ゆらゆら揺れる白い布の向こう側から莉菜さんの声が聞こえ、やっと状況を把握する。
「手ぬ… ああ、それは…… 俺が裏に干しておく」
…ーー驚いた。
突如『いったん木綿』が現れたのかと思った。
目の前で手拭いを広げられてるのにも気付かないなんて、いよいよ重症だ。
「俺もお風呂に入ってくる。少しだけ待ってて」
「…うん!」
何てことないフリをして手拭いを受け取り、莉菜さんの頭をひと撫でしてから風呂に入った。
ー 後編に続く ー