第12章 今夜は朝まで離さない/中編
あ…
やっぱり困らせちゃった……
「っ、ごめん」
項垂れたままの佐助くんに声を詰まらせながら謝ると、
「…俺の女心に対する疎さは もしかすると幸村以上かもしれない」
「え…っ?」
佐助くんがゆっくりと顔を上げ、私の頬を伝う涙を優しく拭ってくれた。
「精一杯、物分かりのいい大人な男を演じてみたんだけど… どうやら逆だったみたいだ」
「大人な、男?」
「ああ… 良かれと思って、今世紀最大の我慢をした。それがまさか君を泣かせることになるなんて」
我慢?
佐助くん、我慢してくれてたの……?
「今回のミスはあまりに酷い。これはちょっと信玄様の元で修行し直さないといけないな」
「…くすっ」
それって、信さん… 信玄様に恋愛指南か何かを受けるってこと?
想像したら面白くて笑ってしまった。
「莉菜さん、泣かせてごめん。それから正直に言ってくれてありがとう。時には少し強引にリードしてみるのもアリなんだと、たった今 学習した」
「佐助くん…」
「今夜はやっぱり、君を城には帰さない。訂正してお詫びさせて欲しい」
「っ、うん……!」
佐助くんは私の目元にキスしてから抱きしめてくれた。
嬉しい、
今日はずっと一緒に居られる。
信長様をはじめ 武将の方々には全て正直に話して私からきっちり謝ろう。
もし本当に怒らせてしまったらその時は…ーーー
自分の中で覚悟を決め、佐助くんの胸に顔を埋めた。
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