第11章 今夜は朝まで離さない/前編
「すまない、なぜか足が…… 急に動かなくなった」
すぐにでも全力で走り出さなきゃ行けないのに こんな時に限って。
俊敏さだけが取り柄な俺が、なぜ。
俺の震えた足をジッと見つめていた幸村が口を開く。
「怖いのか?莉菜がどんな状態で発見されたのかを見るのが」
「そうかもしれない……」
「佐助、冷静になって狼煙の色見てみろ。あの色は最悪の事態の時に使う色じゃねー」
「そう、だよな……」
言われてみればそうだ。
情けない、
自分がこんなに情けない人間だったとは。
「ほら、行くぞ。莉菜がお前を待ってる」
「俺を……」
「そうだ、お前をだ。しっかりしろ!」
莉菜さん…
「…っ」
幸村に喝を入れられ、やっと金縛りがとける。
力強く地面を蹴ると、そこからは自分でも驚くほどの速さで現場へと向かった。
………
………
狼煙を頼りに辿り着いた先は、町外れにある わりと立派な一軒家だった。
庭の方へ回ると後ろ手に縛られ正座させられている20代前半くらいの男がひとり。
その脇に軒猿の仲間2人が立っていた。
「ヒィィィィ!ヒィィー」
俺の姿を見ただけで、縛られた男が悲鳴をあげる。
この男が莉菜さんを……
まだ状況ははっきり分からないけど、だいたいのことは想像がつく。