第11章 今夜は朝まで離さない/前編
「とりあえず俺も探すのを手伝う。あと、安土に潜伏中の軒猿の奴らが何人か居るだろ。そいつらにも声かけて手ぇ貸してもらえ」
「幸村… ありがとう」
「気にすんな。じゃあ俺はあっちを探す。見つかったら狼煙でいーか?」
「ああ」
幸村と別れ、俺は幸村のアドバイス通り軒猿の仲間に協力を仰ぎに行った。
謙信様の許可も取らず個人的なことで忍仲間を動かすなんて、本当はしたくないし してはならないことだ。
でも今は正直、そんなこと言ってられない。
事件や事故……
考えたくないけど、もしそうだったとしたら。
見つけるのが遅くなればなるほど莉菜さんの身が危ない。
時間との勝負だ。
軒猿の皆は俺の身勝手な頼みを聞くや否や、すぐに動いてくれた。
数名で手分けし、さっきより範囲を広げて捜索する。
ーーー
しばらく個人行動をしていると、路地から飛び出してきた幸村と鉢合わせた。
「っ… 佐助、居たか!?」
「いや まだだ。でもさっき有力な情報を得た。具合の悪そうな女性を抱いて、男が駕籠(かご)に乗り込むのを見たって人が居たんだ」
「駕籠…?もしその女が莉菜だったとしたら…ーーー あ!」
「!」
幸村の目線の先に目をやると、北の方角で狼煙が上がっていた。
軒猿の誰かが見つけてくれたのか!
「さすがだな、仕事が早ぇ。佐助、急ぐぞ!」
「あ、ああ…」
…っ!
足が……
「…? おい、何やってんだよ!」
走りかけた幸村が俺の異変に気づき、数メートル進んだところでブレーキをかけて戻って来た。