第11章 今夜は朝まで離さない/前編
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…寝不足だ。
昨夜はほとんど眠れていない。
莉菜さんが来る前に あらかじめ布団を敷いておくかおかないかで悩み過ぎた。
ギリギリまで悩んで けっきょく敷かずに三つ折りに畳み、部屋の隅に寄せてきた。
いくら事前に意思を確認し合っているとは言え、家に入ってすぐ布団が敷かれてるのが目に入れば莉菜さんも身構えてしまうだろう。
敷いてない方が無難だよな、やっぱり。
約束の橋に到着し、莉菜さんを待つ。
時間まであと少しある。
莉菜さんが来るまでを待つ、このソワソワ感が好きだ。
………
………
「…おかしいな」
あれからしばらく経ったけど、莉菜さんが来ない。
待ち合わせ時間はとっくに過ぎてる。
外で待ち合わせをしても ここまで遅れたことは無い……
「…………」
嫌な予感が脳裏をかすめる。
いや、出がけに何かあったのかもしれないし……
もう少し待つか………
………
………
さらに15分ほど待っても莉菜さんは現れなかった。
代わりに道を行き交う人の数が増え、それがさらに俺の不安を増長させる。
何かあったんだろうか。
こんな時だけは、ケータイがあれば… なんて、思ってもどうしようもないことを つい思ってしまう。
急病?急用?
もしくは日にちか時間を間違えてるとか?
急用や日時の間違いならまだいい。
じゃなくて莉菜さんの身に何か………
「………っ」
背筋が寒くなった俺は自分が立っていた場所に目印代わりのマキビシをひとつ置くと、
莉菜さんが通って来るはずの道を走り出した。