第11章 今夜は朝まで離さない/前編
今日の待ち合わせ場所は城から15分ほど歩いたところにある橋のたもとだった。
城下町は朝から賑わっていて、店先に並んだ品物をチラチラ見ながら歩くだけでも楽しい。
佐助くんはもう来てくれてるかな。
頭に佐助くんの姿を思い浮かべると自然と早歩きになってしまう。
一刻も早く約束の橋に着きたくて、近道しようと裏通りに入った。
すると…
「もし、お嬢さん」
後ろから声をかけられる。
「え?」
反射的に振り返ると、笠をかぶった黒い着物の男性が立っていた。
「突然申し訳ない。菊乃屋という宿を探してるんだが、ご存知か」
「きくのや……」
そう言えばそんな名前の お宿があったような?
あ、そうだ、いつも行く呉服屋さんの近くの…!
「この辺りにあると聞いては来たものの見つからなくてね」
「知ってます!菊乃屋さんならその道まっすぐ行って、一本目を右へ曲がって……」
私は拙いながらも菊乃屋への道順を男性に説明した。
「なるほど、ありがとう助かった。道を教えてくれた御礼にお茶でも一杯いかがかな?」
「いえ、御礼なんて」
道を教えたくらいでお茶なんて返って申し訳ないよ。
そもそも今それどころじゃないし。
「じゃあお気をつけて…」
そう言って去ろうとすると、