第11章 今夜は朝まで離さない/前編
隠れ家デート当日の朝、
朝早くに目覚めた私は いそいそと出かける準備をし、いつもより余裕を持って城を出た。
門番に声をかけられたけど、『遠方に用があって出掛ける、夕方には帰る』と告げると、特に怪しまれもせずアッサリと通してくれた。
城さえ出てしまえばこっちのもの。
なんて、ちょっとイタズラっ子のようにクスクス笑いながら軽い足取りで待ち合わせ場所に向かう。
安土城天主からの複数の視線になんて、全く気付かないまま…ーーー
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「ぷっ。莉菜のやつ、随分浮かれながら出てったな」
「こんな朝早くから どちらへ行かれるんでしょう?」
「どうせあの眼鏡の忍と逢瀬でしょ。二、三日前にまた庭で何か燃やしてたし、そうに決まってる」
「あんの眼鏡ヤロウ…!うちの莉菜に何かしやがったら只じゃおかねえ」
「もう とっくに何かされているんじゃないか?ひと月ほど前、とある祭りで仲睦まじく二人が歩いてるのを見かけたと俺の部下から報告があったぞ。あの日は帰りも遅かったしな」
「何、祭りだと!?何でもっと早く言わねえんだ光秀!信長様… 如何いたしましょう、このままでは莉菜は奴の思うままに…!よりによって上杉の……!」
「好きにさせておけ。誰と懇ろになろうが莉菜が莉菜であることには変わらん」
「え?莉菜様が どなたかと懇ろに?"眼鏡ヤロウ"とは一体… 私も時おり眼鏡を使用しますが」
「『上杉の眼鏡の忍』とまで聞いてピンと来ないお前の頭の中は一体どうなってるわけ?っていうか、気づいてないのお前くらいだから」
「く… あの忍とは交流するなと前々から釘を刺しておいたんだ俺は……!」
「秀吉、人ってのは禁止されればされるほど余計にやってみたくなるもんだ。過保護過ぎるのも問題だろ。にしても あの莉菜も ついに女になるか… どう熟してくのか、ある意味楽しみで仕方ねえな ククッ」
「言うな政宗!想像したくねえっ」
「秀吉さん、一旦落ち着いて下さい。とりあえず軍議を始めましょう。ほら、信長様がすでに席に」
「…ああ そうだな、家康の言う通りだ。信長様、失礼致しました。皆も早く席につけ!」
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