第10章 熱帯夜に見た夢/R18
「ふ〜…」
涼しくて落ち着く……
夜店の方は熱気が凄くて蒸し暑かったけど、ここは空気がヒンヤリとして気持ちがいい。
ボーッとしながら静かに身体を休ませる。
でも、一人になると急に寂しくなってきた。
この休憩が終わったらきっと帰るんだろうな。
楽しかった分、離れるときが辛い。
時間なんて気にせずに、ずっと一緒にいられたらいいのに……
私の想いとは裏腹に、刻一刻と別れの時間は近づいていた。
しばらく涼んでいると……
(ガサガサ)
ん…?
今、あっちの茂みが動いたような。
誰も居ないはずの木々の間に何かの気配を感じた。
(あっ)
…?
(あぁッ)
「え…? なに……」
女の人の、小さな声が聞こえる。
誰か泣いてる……?
(う、ううっ)
…!
また聞こえた。
もし怪我人だったら大変だ。
心配になった私は下駄を軽くつっかけて、声のする方へ ヒョコヒョコ歩いて行った。
「あのー、どうかされ……ーーー」
数メートルの距離にまで接近してから、控えめに声をかける。