第10章 熱帯夜に見た夢/R18
「あっ、亀すくいがある!」
片手に持った べっこう飴を舐めながら、莉菜さんが俺の着物の袖を引っ張った。
「亀すくいか… 500年後の祭りでは動物愛護法の規制が厳しくなってめっきり見なくなったけど、やっぱりこの時代には普通にあるんだな」
「だよね… 亀、可愛いなあ」
「すくってみる?」
莉菜さんが亀好きだったとは初耳だ。
俺は深く考えずに亀すくいを勧める。
けど、返ってきた答えは意外なものだった。
「ううん やめとく… 私 生き物をすくう遊びは、ちょっと苦手で……」
「?」
そう言えば。
さっき金魚すくいもあったのに、スルーしていた。
「子供の時は何も考えずにしてたけど、大人になってからは色々考えちゃって……」
「…!そうだったのか、ごめん」
「えっ、気にしないで!私の勝手なポリシーなだけだから」
心優しき一面を垣間見て、また惚れ直す。
一体、今日何度目だろう惚れ直したのは…
その時ふと、向かいにある射的の店の景品が目に止まった。
「あ。じゃあ あれは?」
「え…?」
景品が並ぶ台の一番上の段にある、木彫りの亀の置き物を指差す。
「あっ 亀!!」
「あれなら大丈夫?」
「う… うん!取ってくれるの!?」
「頑張ってみる」
射的の店の前へ移動し、店のオジサンにお金を支払った。