第10章 熱帯夜に見た夢/R18
「キツネのお面、よく似合ってる」
「ふふ、ありがと!こういうの欲しかったの」
売っているお面の種類はキツネだけだった。
でもそれぞれ微妙に表情が違っていて、中でも莉菜さんに似合いそうな穏やかな表情のキツネをチョイスした。
側頭部にお面を付けた莉菜さんが、再び歩き出す。
「佐助くん!ひも引きしようー」
「ああ」
気になる店から店へと、片っ端から渡り歩く莉菜さん。
俺はその姿を2、3歩後ろから微笑ましく見ていた。
上品な花柄の濃紺地の浴衣に赤い帯。
いつもより少し大人びた雰囲気の莉菜さんに、自然と目を惹きつけられる。
でも、惹きつけられているのは俺だけじゃないようだ。
さっきから何人もの男がすれ違いざまに莉菜さんをチラ見して行く。
そして 莉菜さんの後ろを歩く俺の顔を見ては『チッ』と舌打ちして通り過ぎる。
自分の彼女を 下心丸出しで舐めるように見られ、全くもって不愉快だ。
莉菜さんは絶対に誰にも渡さない…ーーー
そんな思いで男達を静かに牽制する。