第10章 熱帯夜に見た夢/R18
鳥居をくぐると祭囃子がいっそう賑やかに聞こえてきた。
囃子独特のリズムに無意識のうちにテンションが上がる。
莉菜さんは参道の両サイドに並ぶ露店ひとつひとつに 目を輝かせて食い付いていた。
「へぇー 色んな夜店が出てるんだね!びっくりだよ」
「俺も驚いた。元いた時代の祭りにも全然 劣ってない」
俺がそう感じるのは隣に君が居るからかもしれないけど。
君が居るだけで、何もかもが輝いて見えるから……
「あっ、焼とうもろこし!」
「とうもろこし食べる?すみません、一本下さい」
焼とうもろこしに反応した莉菜さんのために、早速一本購入する。
「どうぞ、莉菜さん」
「ありがとう!」
とうもろこしを皮切りに、鮎の塩焼き、わたあめ、ポン菓子、きゅうりの一本漬けなど、まずはフード系から攻めていった。
「はぁ、お腹いっぱい… でも佐助くん、ほとんど食べてなくない?私のをつまむ程度しか…」
「そんな事ないよ、食べてる」
「ほんとに…?」
「うん。あ、あっちに お面が売ってるみたいだ」
「え!お面欲しい!」
俺を気遣う莉菜さんの気をそらし、お面屋の前へと誘導する。
正直、自分の腹を満たすより莉菜さんが美味しそうに食べる姿を見てるほうがよっぽど満たされた気持ちになるんだ。
…なんて言ったら、君はどう思うだろう。