第10章 熱帯夜に見た夢/R18
「じゃあ、ギュッとして?」
「…ギュッとしたら許してくれる?」
「うん♡」
「わかった。ギュー」
「ふふ…」
あー、幸せ。
許すも何も最初から全く怒ってなんていないけど、思い切り抱きしめてもらって満足する。
「でもちょっと緊張した。ナンパなんてするの、生まれて初めてだったから」
「そうなの!?」
初めてだったんだ!?
すごく流暢に口説かれた気がするけど…!
「うん。口説き文句は全部君への本心だし、異様に照れてしまって」
「!」
「改めて言わせてもらうけど、浴衣姿すごく可愛い。走る君を最初に見つけたとき、可愛すぎて息が止まるかと思った」
「ほ、ほんとに?ありがと… 浴衣、お晴ちゃんに仕立ててもらったの」
「そうなのか、お晴さんにお礼をしないと」
不思議だなぁ…
可愛いと言ってもらったり、互いを抱きしめ合ったりしていると、逢えなかった間の寂しさが埋まって行く。
「じゃあ行こうか。今日は馬を借りて来たんだ」
「馬!?」
佐助くんの目線の先には、大人しく草を食べながら私達を待つ栗毛の馬がいた。
「わあ、可愛い!」
「クス… さ。行こう」
「うん!」
これって元いた世界で言うバイクデートみたいなもの…?
私が横乗りなのに配慮して、佐助くんはゆったりと馬を走らせてくれる。
西日に照らされて少し暑いけど、頬を撫でる風はとても心地がよかった。
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