第10章 熱帯夜に見た夢/R18
「ちょっ、やめ…!離して!!叫びますよ!?」
「そう言わずにどうか私の胸の中に飛び込んで来て下さいませんか、莉菜さん」
…!
「えっ!?」
今、私の名前を呼んだ?
「さぁ、この胸の中へ。さぁさぁ」
「……?」
男性は私の手首から手を離し、黙って両手を広げて立っている。
「…まさか……」
そーっと近付いて笠の下から顔を覗き込むと…
「あーーー!!!佐助くん!?」
男性の正体は 紛れもなく私の大好きなその人、佐助くんだった。
「ごめん 莉菜さん」
笠と、羽織っていた着物を脱ぎ、いつもの佐助くんに戻る。
「何もぉー!びっくりしたー!」
「すまない、あまりに君が可愛くてつい調子に乗ってしまった」
「もぉぉぉ 手を掴まれた時、ほんとに怖かった!しかも声色も変えてたよね!?」
まるで巧妙なドッキリに引っかかってしまったようで、ものすごく恥ずかしい。
ブーブー言いながら佐助くんの胸をポカポカ叩く。
「変装術なんて使ってほんとにごめん。どうすれば許してくれる?」
「ぶー」
「莉菜さんに許してもらえないと俺は…俺は……」
「…!佐助くん……」
急にシュンとする佐助くんに、母性本能をくすぐられる。