第10章 熱帯夜に見た夢/R18
城を出て、森の中の小道を進む。
表門から出るより人通りは まばらだ。
待ち合わせ場所は もうすぐなはず。
キョロキョロしながら走っていると…
「お嬢さん。そんなに急いでどちらへ?」
「…!」
突然、道の脇から 笠を被った男性に声をかけられた。
思わずビクッとして立ち止まる。
誰だろう、知り合い… じゃないよね?
笠のせいで顔がハッキリ見えない。
「もしよろしければ私の馬に乗って行きませんか?目的地までお送りしますよ」
「いえ、結構です」
「お急ぎなのでしょう?馬なら直ぐに着きます」
「け、結構ですっ」
……怪しい。
直感でそう思った私はその人に背を向けて歩き出した。
すると、
「お待ち下さい」
その男性に、手首をパシッと掴まれる。
「なっ、…や!」
「怖がらせて すみません… 正直に申しましょう。実は先ほど浴衣姿で走る貴女をお見かけし、あまりの美しさに一目惚れをしてしまったのでございます。是非とも お近づきになって頂きたく声をお掛けしました」
「困ります!私ほんとに急いでるんで!」
ナ、ナンパだ!
手を振り払いたいのに男性の力が強くて振り払えない。
助けを求めようにも近くには誰もおらず…
「こんなに心を奪われたのは初めてなのです。第一印象から決めてました、お友達からお願いします」
何この人…!
しつこく絡まれて、不安と緊張で息が苦しくなる。