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【実況者】蟹の好きな花【rtrt夢】

第12章 全身ラジオ〜新婚さんの話〜


 夜中に甘いものを食べるなんて、また不健康などっかの誰かさんに「やっぱり他人のこと言えねーじゃねえかよ!」とか怒られそうだけど、こんな魅力的な提案を断れるわけない。
 牛乳とカステラの食べ合わせは最高だ。口の中でじわあとふたつが溶け合って、広がる程良い甘さ。あれほど合う飲み物と食べ物は他に無いんじゃないかとすら思う。それも彼女お手製のジンジャーミルクがお供するんだから、絶対美味いに決まっている。想像するだけで涎物だ。
 三時のおやつを待ち焦がれる子供のようにそわそわと落ち着かない俺を、彼女は母親を思わせる優しい声で「もう少し待っててね」と宥めながら、小さな鍋に牛乳をもうひとり分追加してゆっくり木べらでかき混ぜる。真っ白な鍋の中がくるくる揺れる様をぼんやり眺めていると、何だか、まだそれを飲んでもいないのに、あたたかな気持ちが胸いっぱいに広がった。嗚呼。

「幸せやわー」
「どうしたの急に」
「んー、こういう時間がいちばん幸せやなあ、って改めて思っただけ」

 結婚して、共に暮らすようになって、家に彼女の存在と部屋と物が増えて、これまでと特に変わらない呼び名で、いつも通りくだらない話をして笑い合って。だけどそれが、明日も明後日も、この先ずっと続いていくのだと思ったら──幸せ、以外の言葉が出て来なかった。
 あの良い声してるゲス牛の刺々しい性格が少し丸くなった原因も、ホラゲ好きのおじさんがいつも誇らしげに左手の薬指を光らせている理由も、よくわかった気がする。愛する誰かがいつでもそばに居てくれるという日常は、想像以上に幸せだ。

「俺と結婚してくれて、ありがと」
「ふふ。こちらこそ」

 病める時も、健やかなる時も、どうか今後とも、俺の人生をよろしくお願いします。

 ──俺の、お嫁さん。





-了-
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