第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
守られていただけだったのに。
居場所も、未来も、心も。全部。
氷雨は、一度強くハンカチを目元に押し付けると、ようやく顔を上げた。その瞳は真っ赤に腫れていたが涙は止まっている。
「すみませんでした……ええと、キャバッローネの……」
「ディーノだ。そういや自己紹介してなかったな」
「いえ、状況が状況ですから」
「まあそうか……もう平気か?」
様子を窺うように顔を覗き込んでくるディーノに、氷雨はニコリと笑ってみせた。
「ええ、大丈夫です。……決まりました、覚悟は」
静かに、氷雨はそう言った。その姿は先程まで泣き濡れていた少女とは思えないほどに凛としていたものだから、ディーノは思わず己の目を疑った。