• テキストサイズ

THE WORST NURSERY TALE

第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ


「ここまでしなくても逃げたりしませんが」

「ははっ、悪いが我慢してくれ。一応ヴァリアーの残党が襲ってくることも想定しないとな」


 残党。その言葉の選び方に、ピクリと氷雨は反応する。
 それとほぼ当時に、車がエンジン音を立てて走り出した。


「さーて、どこから話すかな……まずは君がどこまで知っているかを教えてもらってもいいか?」


 ディーノのどこか探るような声音に氷雨は警戒してしまう。しかし、ここで出し惜しみをしたところで結果が変わらないことは明白だ。
 今日初めて会った相手に手の内を曝け出すのは、正直言って不安しかない。
 氷雨は、数秒の沈黙の後にディーノへと視線を向ける。そして、リング争奪戦について、己が知りうる限りの事をすべて話した。彼女の話を踏まえ、ディーノは嵐の守護者戦以降の対戦の様子と結果、今夜行われた大空戦で起こった出来事を説明する。すべての真実と、決着の瞬間を。


「俺が知っている"ヴァリアーがどうなったのか"については、こんなところだ」


 あまりに衝撃的な結末に、氷雨は言葉を発することができなかった。己がどんな表情をしているのかもわからないまま、視線を落とす。ヴァリアーが負けたというだけでも相当な驚きだったが、幹部クラスを含め精鋭以上の隊員が壊滅となれば、ほぼ組織の壊滅に近いと言っても過言ではない。
 ショックを受けている様子の彼女を前に、ディーノは続きを話すべきか躊躇した。しかし、彼が口を噤むと「それ、で」と小さな声が先を促した。祈るような、声色だった。


「……ヴァリアーの今後については、恐らく9代目と門外顧問で沙汰を下す事になるだろう。俺の予想では……組織の解体はないが、今と同じメンバーで続けることは厳しいだろうと思う」


 ヴァリアーはボンゴレの影だ。ボンゴレの栄光が今後も輝くためには、影であるヴァリアーの存在を消す事は出来ない。ただそれは、XANXUS達でなければならない理由もないのだ。
 ディーノの見解は辛辣だが的を射ていた。氷雨にも反論の余地はない。彼女は、次の言葉を紡ぐ為に深く息を吐き出した。
/ 225ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp