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THE WORST NURSERY TALE

第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ


 氷雨は昨日と同じベッドの上で目を覚ました。昨夜はあの後「みんなの帰りは遅いから、先に寝てなさい」とルッスーリアに言われて部屋に戻ったのだ。一日中昏倒していたとはいえ、ボスとのやり取り等で精神的にかなり参っていた彼女は、ベッドに横になるなり深い眠りに落ちていった。


「……10、時」


 備え付けの壁掛け時計を見ながら、氷雨は呟いた。リング争奪戦にどれくらい時間が掛かるのかは知らないが、さすがに帰ってきているだろう。氷雨はベッドから起き上がる。ベルくんと話をしなければ、と思った。
 ――スクアーロは終わったことを謝っても仕方がないと言った。そうだとしたら、たぶん、ボスが聞きたかったのは“これから私がどうするか”なんだと思う。正直な話、どうしたらいいのかはまだわからない。だから、まずは疑問に思うことを一つずつ片付けていくしかない。


「ベルくんは、マシな答えを出した…って言ってたし。聞いてみる価値はあるよね」


 それからルッスーリアから聞いた話もしてみなければ、と氷雨は思うのだが、そちらの話はどうにもルッスーリアの趣味というか好奇心が多分に含まれている感が否めない。何を期待されているのかは、よくわからないが。
 氷雨はクローゼットに入っていた服を適当に見繕って着替えを済ますと、部屋から出ようとした。ボスに会ったらと思うと、少し怖いけどその時はその時だ。昨日よりは多少度胸が付いたらしい。
 ドアノブに手を掛けようとしたその時、扉はひとりでに開いた。氷雨のほうに。ゴツン、といい音が鳴る。


「いっ……!?」

「あり?氷雨起きてたの?おっはよー」


 額をおさえて蹲った氷雨の頭上から、能天気な声が降ってきた。謝罪の一言もなく挨拶をしてくるあたりがなんとも彼らしい。
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