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THE WORST NURSERY TALE

第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ


 ルッスーリアは、それはそれは楽しそうな顔をして話の続きを促す。それなりに深刻な話をしているつもりなのだが、なんというかもう雑談をしているかのようなノリである。
 氷雨は、困ったように表情を歪めながらも再び口を開いた。


「嬉しかった、のかな。よくわからない。でもそんなこと、初めて言われた」

「まあ、そうなの?」

「うん。……ね、ルッス姉さん。聞いてもいい?」

「ええ、なんでもどうぞ!」

「その……ベルくん、本気だと思う?私がいないと気味が悪い、なんて」


 氷雨は複雑そうな顔をしてルッスーリアに問いかけた。いくら考えてみたところで、ベルフェゴールの真意など汲み取れそうになかったからだ。
 ルッスーリアは「そうねぇ」と言葉を濁しながら、どう答えるべきかを考えていた。


「本気だと思うわよ。貴女がいない間、ベルちゃん、気味が悪かったもの」

「へ?」

「ご飯はまともに食べないし、一日中資料室に籠ってるし、そうかと思ったら今度は外出して血塗れで帰ってきたりするのよ?気味が悪いでしょ?」

「それは……気味が悪いね」

「きっとどうしたらいいのか、わからなかったのね。氷雨ちゃんがいなくて」

「……!!」


 ルッスーリアはニコニコと笑っている。いや、にやにやしているようにも見えた。その笑みの真意を知るには、まだ氷雨には様々な感情が足りなかったし余裕も足りなかった。ただ胸のあたりがどうにもくすぐったい感じがする。
 氷雨は、伏せていた顔をあげた。その表情は、恐れと期待をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたような、なんとも言い難いものだった。


「でも、ぜーんぶ私の予想だから、帰ってきたらベルちゃんに聞くのが一番ね!」

「身も蓋もないなぁ」

「こういうのは当人同士で解決するものよ?結果は教えてね~」


 怪我をしているのに、ルッスーリアはいつもと変わらない調子である。
 けれど、そんなルッスーリアと話しているうちに不思議と自分の心が落ち着いてくるのを氷雨は感じていた。波立っていた心が、穏やかに凪いでいく。もしかしたらルッス姉さんは、わざといつもの調子で話してくれてるのかな。今日はスクアーロもルッス姉さんも優しい。どうしてだろう。
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