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THE WORST NURSERY TALE

第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ


 氷雨は見知らぬ部屋の見知らぬベッドの上で目を覚ました。頭がガンガンする。ここは何処だろうか、と白い天井を見上げながらぼんやりと彼女は考えた。
 ガチャリ、と扉を開く音が聞こえる。


「起きたか」


 低く唸るような、その声を聞いて氷雨は飛び起きた。声の聞こえた方向へ顔を向ければ、眉間に皺を寄せたXANXUSの姿が視界に入る。彼女は自分の置かれた状況を漸く思い出した。
 私、ベルくんに攫われて。ここにボスがいるってことは、ヴァリアーのアジトに連れて来られたんだ!
 氷雨はサーっと顔から血の気が引いていくのを感じた。ありえないことをしてしまった。考える間もなく、彼女はベッドの上で土下座する。


「申し訳ありません!今すぐ戻ります、私がコメータを説得……」

「無駄だ。コメータのボスは既にボンゴレ本部へ文句をつけてる」

「……!!」

「今更テメェが戻ったところで相手が勢いづくだけだろう」


 申し訳ありません、ともう一度告げた氷雨の唇は震えていた。下げたままの頭を上げられない。XANXUSの声は至って落ち着いているように聞こえるが、己の仕出かした失態を思えば頭を上げられるはずもない。ばくばくと、心臓がうるさく鳴っている。
 XANXUSは氷雨のいるベッドまで近付いてくると、近くにあった椅子にドカッと腰を下ろした。


「どうしてこうなった」

「わ、私の力不足です。ベルを止められなくて……」

「ベルは何故こんなことをした」

「……わ、わかり、ません」

「これからどうするつもりだ」

「……わかりません。どうしたら、いいのか……」


 氷雨は両手をぐっと握りしめる。彼女には、本当にわからなかった。
 命令を守れず、ボスからの信頼は地に落ちているはずだ。本部に文句を言ったということは、弟も必死になって自分の行方を追っているのだろう。何処へ行っても事態の収拾は図れない。どこにも、いけない。
 握りしめた両拳が震えた。どうしたって、ヴァリアーにもコメータファミリーにも迷惑をかけることしかできない、なんて。今まで十数年生きてきて、これほどまでの窮地に立たされたことはない。頭がグラグラする。目の前が真っ白になりそうだ。真っ白に、なる。
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