第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
「おまえ状況わかってる?早くしろ、見つかんだろ」
「ベルくんこそ状況わかってるの?ボンゴレに逆らったようなものだよ、これ!」
「ボンゴレはすぐボスのものになるじゃん」
「まだボスのものじゃないでしょ!いまコメータに喧嘩売っても…」
「あーもーうっせーな。そんなん知らねーよ、さっさと来い!」
「無理だよ!」
氷雨は大声で叫んだ。ベルフェゴールが初めて聞いた、氷雨の叫び声だった。こんな悲痛な声で叫ぶ彼女を彼は知らない。「無理だよ……わかるでしょ」と氷雨は声量を落として続ける。悟ったような、諦めたような声色。
気に食わない、とベルフェゴールは思った。そんなこと、そんなことは。
――おまえに指摘されなくてもわかってるよ。
彼はわかっていた。頭の片隅で理解していた。ボスに迷惑は掛けないと言いながらも、結局勝手なことをしてるのは変わらないことを。ボスに逆らっているも同然であることを。だけど。それでも。
「……わかってないのは、おまえのほうだろ」
「どういう、こと?」
「約束破ったのは、おまえじゃん」
「!……それは……」
「勝ち逃げとか生意気なことしてんじゃねーよ」
「だって、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ……」
「そんなこと言ってて悪いかよ!おまえマジで生意気なんだよ!」
氷雨の腕を掴んでいる手に力が入る。骨が軋んで、彼女は苦痛に表情を歪めた。ベルフェゴールは力任せに彼女の腕を引っ張って歩き始める。男女の力の差なのか、氷雨がどれだけ足を踏ん張ってみても彼の力には負けてしまう。
今のベルフェゴールには、すべてが煩わしく感じられた。鳴り響く警報がうるさい。「待って、離して」と繰り返す氷雨の声がうるさい。
「うるせーっての!おまえ、こんなとこに未練あるわけ?ここにいたいの?」
「そういう話をしてるんじゃ、」
「オレは嫌なんだよ!」
「なにが……」
「おまえのいないアジトは、薄気味わりーんだよ」
氷雨は驚いた顔をしている。オレは何を言ってんだろ、とベルフェゴールは思った。