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THE WORST NURSERY TALE

第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ


 やはりそれなりのセキュリティは備わっていたらしい。ベルフェゴールが塀を超えるや否や、ジリリリリと耳障りな音が鳴り響く。しかし、彼はそれをまったく気に止めていない様子で屋敷内に侵入した。防弾ガラス程度は、彼のナイフの前では意味を為さない。
 侵入した部屋は無人だった。純和風建築の客間だろうか。ベルフェゴールは襖を開けて廊下に出ると、粘写が示していた場所と自分が作った屋敷の見取り図とを照らし合わせて目標の場所へと走り出す。
 外から見ると、人気のなさそうだった屋敷だが、一応内部にはボディガードの類が存在したらしい。日本家屋に似合わない黒いスーツ姿の男達が数人、彼の行く手を遮ろうと立ちはだかったが、誰も彼も大した実力の相手ではなかった。(これなら氷雨のがつえーかも)とベルフェゴールが思う程度には。

 頭の中の地図。その目標点へと、ベルフェゴールはあっさり辿り着いた。勢いよく襖を開く。と、同時にカチリと撃鉄の起きる音がした。右手の方向へ首を捻ると、そこには驚いた顔をしている女性の姿があった。ベルフェゴールは、にんまりと笑う。


「うしし、氷雨めーっけ!」

「ベルくん!?なにやってるの?」


 氷雨は構えていた銃を下ろすと、信じられないとでも言いたげ表情でベルフェゴールを見ていた。
 そんな彼女のことはお構いなしに彼は氷雨がいた部屋の中を見渡す。彼女らしい、殺風景でモデルルームみたいな部屋だった。まだ、警報は鳴り響いている。あまり時間はなさそうだ。


「行くぜ、氷雨」

「え、ちょ、えっ……ま、待って、なんで」

「なんではこっちの台詞。なんで勝手に出てった?」

「ボスから聞いてないの?ボンゴレ本部からの書状が」

「あんなもん、ぐっしゃぐしゃにしてやった」

「ええええぇ」


 ベルフェゴールは未だ混乱している氷雨の腕を掴んで、強く引っ張る。普段であれば、これで氷雨は大人しくついてくるーーはずだったのだが、今日は引っ張った腕を引っ張り返された。ついてこない気でいるらしい。ベルフェゴールは心底不機嫌そうな様子で彼女を振り返る。
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