第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
それから、約4時間後。ベルフェゴールは目的地の駅に立っていた。小じんまりとした駅には、ちらほらと人の姿が見える。彼はタクシーの運転手に「3時になったら、もっかい来て」と言付けてから、閑散とした町の中へ足を踏み入れた。
風鳥町(ふうちょうまち)――それは山間部にある、小さな町だった。それなりに住宅は建っているようだが、畑の面積と住宅地の面積はどっこいどっこいと言ったところである。運転手が言ったように、そこは田舎であった。周囲を見渡せば、山や森が目につく。そして、その景色の中に似つかわしくない巨大な日本家屋の屋敷が一軒。
「……あれか。わっかりやすー」
ベルフェゴールは、屋敷に向かって歩き出す。田舎の町にもかかわらず町人たちは外人に対して好奇の目を向けることがなかった。もしかしたら似たような者たちを普段から目にしているのかもしれない。
屋敷は高い石塀で囲まれていた。とは言っても、ベルフェゴールの手にかかれば進入路を開けることも塀の上に飛び乗ることも不可能ではないレベルの塀だ。
けど、なんかセキュリティは付いてるだろーしな…と思ったベルフェゴールは、塀の周りをぐるりと回って中を覗けそうな場所を探す。背が高く葉の生い茂った木々がそこらじゅうにあったので、苦労はしなかった。
「木造かよ。侵入は楽勝だな…」
持参したメモ帳に、おおよその見取り図を書き込んでいく。外から見るだけでは内部の構造はわからないが、正直何処からでも入り込めそうだとベルフェゴールは思った。それより、ガードマンの姿すら見えないのは如何なものか、と思う。
彼が何本目かの木に登ったとき、裏庭らしき景色とそこで洗濯物を干している女達が見えた。慌てて身を隠したが、女達はベルフェゴールの存在にはまったく気が付いていないようだ。何が楽しいのか、ピーチクパーチクと談笑している。
――会話が、聞きたい。
ベルフェゴールは、こっそりと塀の中に盗聴器を投げ込んだ。無論彼のことである。女達の視界に入るようなヘマはしない。まあ見つかったところで外見は普通のコインである。同業者ならともかく、こんな田舎で平和ボケしている連中には見破れないだろう、という自信もあった。