第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
「マーモンちゃーん、ここにいるのー?」
「こっちだよ、ルッスーリア」
「いたいた。あら、ベルちゃんも一緒だったのね。ちょうど良かったわ~」
現れたのは、ルッスーリアだ。マーモンとベルフェゴールの顔を見るなり満足そうに笑みを浮かべる。マーモンは相変わらずの無表情で出迎えたが、ベルフェゴールは何処か嫌そうな顔をしていた。
「どうしたんだい?」
「そう!ボスがね、ジャッポーネに行くって言い出したの」
「え、マジ?ジャッポーネ?」
ルッスーリアの言葉に食いついたのは、ベルフェゴールのほうだった。先程まで話していた国の名前がいま出てくるとは流石に思っていなかったのだろう。驚きを隠し切れていない。
そんな彼を見て、ルッスーリアは不思議そうな顔をしながらも「そうよー」と頷く。
「スクアーロが偽物のハーフボンゴレリングを掴まされちゃったらしくてね。だから今度はボスが直々に取りに行くみたいよ~。幹部は全員ついてこい!ですって」
「ただでさえ忙しい時期なのに嫌よね~」と愚痴をこぼしているルッスーリアの言葉を、もうベルフェゴールは聞いていなかった。まるで自分の計画を後押しするように動き出した歯車に、彼は運命に近い何かを感じていた。口元に、にんまりと笑みが浮かぶ。
「聞いたかよ、マーモン」
「聞いてたよ。出張手当、どれくらい出るかな」
「おまえはそればっかだね」
「君も似たようなものだろ」
マーモンは抑揚を欠いた声音で吐き捨てるように言った。自分の欲望に忠実なところは、二人とも変わらない。事はどこまでも悪いほうに転がっていっているような気がして、マーモンは微かに寒気を覚えた。