第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
ファミリーの歴史、歴代ボス、規模、本部の住所、ボンゴレとの関係など、コメータファミリーに関する多くの情報がそこには並べられている。とにかくコメータファミリーに関する情報を片っぱしから調べてみたベルフェゴールであったが、最終的な感想は「歴史が古いだけの中小ファミリー」だった。
マーモンは顔色を変えることなく、口を開く。
「ボンゴレが必要だと言うなら必要なんじゃないの」
「ふーん?王子にはよくわかんねーや」
「それで?」
「それで、ってなにが」
「するのかい?殴り込み」
「んー……皆殺しにすると怒られそうだからな……」
まるで、そうする事が取って然るべきなのに、とでも言いたそうな様子でベルフェゴールは首を傾げた。そして数秒の思案の後、プリンタが印刷し終わった資料の束をまとめて手に取りながら再び言葉を発する。
「とりあえず、あのシスコンバカを脅して氷雨を誘拐してこよっかな」
ししし、と楽しそうな笑い声を零してベルフェゴールは言う。
それだけでも十分コメータファミリー…特に現コメータファミリーボスに喧嘩を売っているような気がするけど、と思ったがマーモンはそれを言葉にはしなかった。
やはり、スクアーロの言っていたことは間違っていたようだ。ベルは確実に氷雨への執着を強めている。本人はそれを物欲や支配欲の一種と認識しているようだが。どちらにしろ、一人の人間に執着を持つことは好ましくない。それが支配欲にしても恋慕にしても同じことだ。
マーモンの冷めた視線にも気付いていない様子で、ベルフェゴールは「んー」と伸びをする。どれだけの時間、この資料室に籠っていたのだろうか。
「けど、たしかコメータの本部はジャッポーネにあるんじゃなかったかな」
「そーなんだよな。ジャッポーネとか遠すぎ……休みもらえっかな」
「難しそうだと思うけどね」
「だよね。ボスになんて言おうかなー」
あーあ、と新たな問題の浮上に心底嫌そうな顔をしてベルフェゴールは頬杖を付く。下手をすればボスがボンゴレのボスの座に着くまでは、暇をもらえそうにないかもしれないと思った。
そのとき、入り口のほうから足音と明るい声が聞こえてきた。