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THE WORST NURSERY TALE

第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ


 バタン!
 大きな音を立てて、突然部屋の扉が開いた。ベルフェゴールは更に苛立ちが募るのを感じながら、扉へと視線を移す。そこには、銀髪の男――スクアーロが仁王立ちしていた。正直今は会いたくなかった人物だ。


「んだよ、勝手に入ってくんな」

「てめぇも勝手に入ってるだろうが!部屋にいねぇと思えば、こんな所に来てやがったのかぁ」

「オレが何処にいようとオレの勝手だろ」


 ベルフェゴールは上体を起こしてベッドに座る体勢になると、不機嫌な様子を隠そうともせずにスクアーロを睨みつける。相当ご機嫌ななめである。
 スクアーロは相手の様子を見ると、チッと軽く舌打ちした。わざわざ氷雨の部屋に来ていること、これだけベルフェゴールの機嫌が悪いことを合わせて考えれば、先程マーモンやルッスーリアが言っていたこともあながち間違っていないのではないかと思えてしまう。それは、悪い展開に続く道でしかないと彼は思う。だからこそ、彼はあえて挑発するような調子で口を開いた。


「なんだぁ?遊び相手がいなくなって凹んでんのか?」

「……そんなんじゃねーよ」

「俺には寂しがってるようにしか見えねぇがな」

「ちげーっつってんだろ!氷雨なんか、いなくても何も変わんねーよ」


 不機嫌を通り越して殺気に近いオーラがベルフェゴールから発せられる。目元は前髪で覆われているものの、その奥に隠れた瞳は鋭い眼光を放っているに違いない。
 スクアーロは、口の端を上げてにやりと笑った。思惑通りに食いついてくるコイツは、やはりガキでしかないと再認識する。否定しろ。もっと強く拒め。彼はそう思って更に言葉を続ける。


「じゃあ、てめぇにとってのあいつは何なんだ?」


 ベルフェゴールは、ぐっと言葉に詰まる。それだけスクアーロの問いは衝撃的だったのだ。自分にとっての氷雨は、何なのか。彼はそんなことを考えてみたこともなかった。ただそこにいて、そこに居続けるだけの存在だと思っていた。
 ――そうだ。このゲーム機と同じように、いつでも使えるモンだと。


「あいつは……暇潰しのゲームと、変わんねーよ……」


 ベルフェゴールは漸くそれだけの言葉を絞り出した。嘘は吐いていない。彼は確かに氷雨のことをそういう存在だと思っている。
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