第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
スクアーロがマーモンに真意を問いただそうと口を開きかけたところで、彼の隣にいたルッスーリアが「私もそう思うわ」と同意を示した。レヴィは「そうなのか」と言ったものの、よくわかっていない様子である。
「どういうことだ?」
「そのままの意味さ」
「それがわからねぇから聞いてんだろうが!」
「まあまあ、スクアーロ落ち着いて!」
「誰のせいだぁあ!」
僕のせいじゃない、とでも言いたそうな顔でマーモンは紅茶を飲んでいる。どうやらあまり話す気はないようで「ルッスーリア、教えてあげなよ」とスクアーロを宥めているルッスーリアに説明を促した。
既に結構イライラしているスクアーロの視線がルッスーリアに向けられる。サングラスの位置を直しながら、彼は「はいはい」と答えた。
「つまり、ベルちゃんにとって氷雨ちゃんは玩具程度の存在なの?ってことよ」
「違うのか?」
「当たらずとも遠からずってやつだよ」
「……よくわからんぞ……」
「まあ私達も確信があるわけじゃないのよ。予想!」
ルッスーリアはキャッと声を上げたかと思えば、誰が促したわけでもないのに更なる予想を語り始める。
たとえば、氷雨と親しくなってから任務以外の殺しが減った。氷雨が長期任務に行くとつまらなさそうにしている。死んで問題ないはずの氷雨を任務中に助けた。以下省略。
妙齢のオカマから次々と出てくるエピソードを話半分に聞きながら、スクアーロはその可能性を考える。確かに完全な白とはいえないだろうが、現状で考えれば限りなく白に近いグレーだろうと思った。あの子供が興味でなく好意を抱くなどとは到底考えられない。
「その程度、ただの気紛れだろぉ」
「そうだといいんだけどね。僕はベルだからこそ悪い可能性もあり得ると思うよ」
「なんだと?」
「ベルは子供だ。感情のコントロールも下手。そして恐ろしいほど欲に忠実」
「あの子、きっとハマると溺れるタイプよねぇ。今は殺しに向いてる興味が他のことに向かったらと思うと……」
「う゛お゛ぉい!そりゃやべーじゃねぇかぁ!」
「やれやれ、だから悪い可能性だって言っただろ」
事の重大さにようやく気付いたらしいスクアーロは頭を抱えている。