第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
氷雨がヴァリアーを抜けた。
スクアーロがその事実を知ったのは、ハーフボンゴレリングをXANXUSに献上した後のことだった。どおりでベルの機嫌が悪かったわけだと納得する。その日の夕食の席では、ベルフェゴールが話題を切り出さないので、結局スクアーロが氷雨脱退の件を伝えることとなった。幹部陣の反応はそれぞれ異なっていたが、誰も異議は唱えなかった。ベルフェゴールが持っていた書状と、ボスの判断であるということが決め手だった。
結局のところ、面白くなさそうな顔をしていたのはベルフェゴールだけだ。彼は話が終わると食事にほとんど手をつけずに出ていってしまった。
「大丈夫かしらねぇ、ベルちゃん。あんまりご飯食べなかったけど」
「ガキが玩具を取り上げられて拗ねてるだけだろ。放っとけ」
「これしきの事で心を乱すとは未熟な奴だ」
「ベルは子供だからね、しかたないさ」
スクアーロは食後の紅茶を飲みながら、それをお前が言うかと思ったが外見ではなく精神の問題として捉えれば確かにベルはマーモンよりも幼いのかもしれない。狂った子供。一番面倒で一番手のかかる厄介な人種だ。
「まあ、明日になればケロッとしてんだろ。玩具は替えがきく」
「それはどうかな」
マーモンはティーカップに角砂糖を二つ入れると、スプーンでくるくるとかき混ぜた。この赤ん坊の声色は冷淡で感情をあまり表さない。けれども、その言葉は時に恐ろしいほど真実の的を射ていることがある。