第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
スクアーロが「なにかあったのか?」と問いかけると、ベルフェゴールは「……別に」と答えた。しかし、普段から笑顔がデフォルトであるベルフェゴールが無表情になったところを見てとると(図星かよ)とスクアーロは心中で呟く。頭はおかしいくせに妙な所でわかりやすい奴だな、と思った。
「とにかくそこを退け。俺はボスに用事がある」
「ししし、どーしよーかな」
「てめぇ……暇なら氷雨んとこでも行ってきやがれ」
「…………おっまえ、マジでカス」
「はあ?……う゛おっ!」
お得意の笑顔を浮かべて少し機嫌が良くなったように見えたベルフェゴールだったが、スクアーロの言葉を聞くとまた唇をへの字に曲げてしまう。そして、珍しく抑揚を欠いた声音でぽつりと言葉を落としたかと思えば、ツカツカとスクアーロに向かって歩いていき、すれ違いざまに脇腹を蹴り飛ばした。
スクアーロは、激しく浮き沈みを繰り返す少年のテンションに全くついていけず、不覚にもその蹴りを食らってしまった。
「が、はっ……何しやがるガキぃい!」
「てめーで考えなバーカ」
ベルフェゴールは最後まで悪態を吐きながら、さっさとその場から立ち去ってしまう。カツン、とブーツが立てる音はいつもよりも高く響いた。
いっそ追いかけて三枚に下ろすか。と真面目に考えたスクアーロだったが、今はガキに構うより任務の報告だと思い直す。ガキの気紛れは性質が悪い上に面倒だ。放っておけばいつか機嫌を直すだろう、そう思った。
「う゛お゛ぉい!ハーフボンゴレリングを取ってきてやったぜ、ボスさんよぉ!」
「うるせぇ」
「ぐあっ!」
気を取り直して、意気揚々とXANXUSの部屋に乗り込んだスクアーロであったが、今度はXANXUSからグラスをぶつけられる羽目になるのであった。任務は成功したというのに今日はついていない。