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THE WORST NURSERY TALE

第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ


 説得に失敗してしまった氷雨は、彼に付いて歩きながらどうしたものかと思案している。スクアーロへの伝言を後回しにするにしても、次の任務の下準備やその他諸々を考えると正直遊んでいる場合ではないのだ。しかし、彼女はこういうときに穏便に断る術を持っていなかった。相手があのベルフェゴールであるのだから、尚更である。


「見つけたよ」


 いよいよ氷雨が諦めかけたその時に、鶴の一声よろしく可愛らしい声が響いた。ベルフェゴールと氷雨の前に現れたのはマーモンだ。


「マーモン!どうしたの?」

「君じゃなくてベルに用事。というか任務だよ」

「マジ?ちぇっ、タイミングわりー」


 ベルフェゴールは渋々ながらも氷雨の腕を離す。流石の彼といえども任務となれば納得せざるを得ない。XANXUSが帰ってきた今は尚更であった。傍若無人なベルフェゴールもボスからの反感だけは買いたくない、と思っている。
 思わぬ助けが入り、氷雨はホッと安堵の息を吐いた。ベルフェゴールの機嫌を損ねずに済んだのは僥倖と言う他ない。


「じゃ、私も任務の準備あるから行くね?」

「おー。氷雨、帰ってくんのいつ?」

「え?あー、たしか明後日かな」

「オレらは?マーモン」

「僕らも明後日の予定だね」

「ふーん。じゃ、勝負は明後日まで延期だな」

「あ、延期になるだけでやるんだね」

「当然だろ」


 うしし、と笑うベルフェゴールと困ったような顔をする氷雨。マーモンは二人の会話の意味がわからずに首を傾げている。
 ベルフェゴールはマーモンに歩み寄ると「行こうぜ」と声を掛けた。そして、長い廊下を歩いていく途中で一度だけ氷雨を振り返る。

「逃げんなよ、氷雨」

 それはもう素晴らしく不敵な笑みを湛えて、ベルフェゴールはそう言った。
 氷雨は一瞬きょとんとしていたが、すぐに笑みを浮かべると「了解」と大きな声で答えた。彼女も伝言と任務の下準備を始めるべく、ベルフェゴール達とは反対方向に歩き出す。その足取りは何処か弾んでいるようにも見えた。
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