第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
「そうか。こっちもパソコンをぶん獲ったが、めぼしい情報はなかった。これから解析班に渡すつもりだが……」
「僕は無駄だと思うよ」
「オレもマーモンに同意ー」
マーモンは近くのソファに着地する。ベルフェゴールはたいして興味もなさそうな様子で同意を示した。
今まで情報がひとつも出てこないことがおかしいのだ。これは意図的に情報を破棄された可能性が高い。というのが二人の見解である。
「まあ、そうだろうがなァ」
「もうどーでもいーじゃん。首謀者も下っ端も殺したんだから問題ないだろ」
「あとはセリオーネファミリーの本部にでも違約金を請求してくれればいいよ」
「そうするか……」
スクアーロは眉間に皺を寄せて視線を落とした。彼の中にはどうにも釈然としないモヤモヤが残っていた。しかし、これ以上深入りしても何も出てこない可能性は高い。
二人の言うように、今回の件はこれで流してしまうのが一番ではある。
「それより氷雨が無事でよかったね、ベル」
「なんだよ急に。別にあいつが死んだってオレには関係ないし」
「そうかい。通信室に入り浸ってたから、てっきり彼女の心配をしてるんじゃないかと思ってたよ」
「あれは……あいつの猫被りっぷりがおもしれーから聞いてただけ。そんだけ」
「へえ」
なんなんだよ、と不機嫌そうな様子でベルフェゴールはマーモンを睨んだ。けれどもマーモンはしれっとした様子で視線を横にずらした。ベルフェゴールもその視線の先を追う。
そこには楽しそうに談笑している氷雨達の姿がある。
「それでね、この簪のおかげで死なずに済んだの」
「まあ!役に立って何よりだわ~。それによく似合ってるじゃない!」
「うむ……か、可憐だ」
「そうかな?ありがとー」
「……ちやほやしちゃってアホらしー。あいつらのほうが心配してたんじゃん?」
「……そうかもね」
マーモンは心中で人知れずため息を吐いた。ベルはなにもわかっていないんだなあ、いや、気づいていないだけかな……と思った。
「(真っ先に、ミカエルの屋敷に行くって言って飛び出していったくせにね)」