第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
その状況下で、ベルフェゴールはにんまりと笑ってみせた。まるで「チェックメイト!」と歓喜に満ちた声で叫ぶ子供のように。
「なあ、オレに銃向けちゃって良かったの?」
「な…っぐ、あぁああぁあ!」
拳銃を持っていた男の右手首に、鋭い棒状の凶器が刺さった。痛みに絶叫しながらも男は拳銃の引き金を引く。しかし、狙いをずれて発射された銃弾はベルフェゴールに当たることはなく、通りすぎていった。
男が叫び声をあげるのとほぼ同時にベルフェゴールは、袖口から新たなナイフを取り出して投擲する。胸に二本、首に一本、頭に一本。放ったナイフすべてが男に刺さった。喉を切り裂かれた男はもう声を出すことすら叶わずに、そのまま後ろに倒れる。ベルフェゴールは、その様子を眺める素振りすらなく、倒れたままの女へと視線を移した。
「王子に無駄な芝居、打たせんじゃねーよ」
「……あは、ごめん。思いの外寝てた」
倒れた男の隣で、氷雨は身を起こした。