第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
いや、立ち上がろうとした。しかし、ソファから腰を浮かせた途端に彼女の膝から力が抜ける。支えを失った体は床に倒れ込んだ。体が、動かない。それどころか意識も薄れてくる。
――薬、か……。
そう思ったときにはもう氷雨の意識は霞がかっていて、やがてぷつりと途切れた。
氷雨が床に倒れ込む様子をミカエルは静かに眺めていた。彼女が完全に動かなくなったことを見届けると、廊下に続くドアを開けて外に待機させていた部下を招き入れる。
「武器を取り上げて地下に転がしておけ。傷はつけるな」
「はっ、かしこまりました」
「私がいない間は誰も屋敷に入れるなよ」
「承知しております」
まったく抵抗しない女を軽々と持ち上げて、部下の一人は部屋を出ていった。ミカエルは再び携帯電話を取り出すと、電話をかける。
「ああ、私だ。問題ない。今夜――ヴァリアーのアジトを強襲する」