第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
「そ、そういえば、明日の任務の準備は終わったの?隊員総出で行くんだよね?」
「もちろん大丈夫よ!あとは明日の朝に出発するだけだわ」
「そっか、でも皆に一週間も会えないのは寂しいなぁ」
「氷雨ちゃんは、こっちの任務があるから仕方ないわねぇ……。一人でもちゃんとご飯食べるのよ?」
「あはは、大丈夫だよ。一人でも生活くらいできるから」
「そうかしら?心配だわー…。あ、そうそう!氷雨ちゃんに渡したいものがあるの」
「うん?なあに?」
ちょっと待ってね!と言ってルッスーリアは足早にダイニングから出ていく。その背を見送りながら、氷雨は人知れず安堵した。話題そらしは成功したらしい。温かい紅茶を飲むと少し肩の力が抜けた気がした。
少しして戻ってきたルッスーリアは上機嫌で氷雨に持ってきたものを差し出す。それは花を模したアメジストで飾られた簪であった。予想外の品が登場したことで、氷雨は驚きを露にする。
「ルッス姉さん、これ……」
「最近あなたオシャレしてるでしょ?よかったら使ってちょうだい、私からのプレゼントよ」
「え、でも悪いよ。私、普段はオシャレしないし」
「もー!これを機にオシャレに目覚めたらいいのよっ。女は磨いて飾るもんだわ!」
「でも……」
「受け取らないと踏んづけちゃうわよ!?」
「あ、受け取ります、はい」
最終奥義『踏んづける』を出されれば、氷雨に勝ち目はない。渋々ながらも彼女が簪を受け取るとルッスーリアは満足そうに微笑んだ。
「いい子ね!それで飾って、意中のあの人をゲットよっ」
「またその話になるの……?」
話題そらしは見事に失敗である。なんだかヒートアップし始めてしまったルッスーリアにつかまって、氷雨はそれから三時間もガールズトークに付き合わされることになった。