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THE WORST NURSERY TALE

第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?


 すっかり夜の帳が降りた頃、アジトに到着した氷雨は大きく伸びをした。なんだか珍しい種類の人間と話をしたせいで、肩が凝ったような気がする。氷雨が廊下を歩いていると、向かいから見知った顔が近づいてきた。ヴァリアーの幹部のひとり、マーモンである。


「やあ、氷雨。任務帰りかい?」

「うん、今日は話をしただけなんだけどね。護衛の任務でさ」

「護衛?それはまた、おかしな任務だね」

「あはは、だよねぇ。依頼主もおかしな人だったよ」


 心底おかしそうに氷雨はくすくすと笑い声をこぼした。彼女が「マーモン、おいでー」と両腕を広げると、マーモンは些か不服そうな雰囲気を滲ませながらも、ふよふよと近づいて、その腕の中におさまる。
 氷雨は満足そうに笑った。


「その任務、長引きそうなのかい?」

「うーん、結構長引きそうだなぁ。いつ終わるか全然わかんない」

「そう、それは大変だね」

「マーモンのほうは?」

「もうすぐ終わるよ。調査任務は金にならないから早く終わらせたいんだよね…」

「そりゃ、お疲れ様です。あ、これからご飯ー?」


 マーモンがこくりと頷くのを確認すると、氷雨はダイニングに向かって歩き出した。すれ違う隊員は二人に向かって「お疲れ様です」と頭を下げていく。
 「ありがと」と言って笑う氷雨とは対照的に、無言のままでいるマーモンは不意に自らを抱いている彼女の腕をぽふっと叩いた。
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