第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
氷雨はハンドバッグから一枚の書類を取り出すと、一緒に取り出したボールペンでサラサラと書き込んでいく。最後に一番上から下まで、すべてを確認して彼女はその書類をミカエルに差し出した。
「契約書になります。こちらにサインを」
「受けてもらえるのかい?」
「ボンゴレ傘下のファミリーからの依頼は、本部からの依頼と同等に扱えと言われていますから断るつもりはありませんでした。……まあ、それを差し引いても、私で良ければ力になりますよ」
「氷雨さん……ありがとう!」
どうやら暗殺部隊に対してお門違いな依頼をしたことは、彼も自覚していたらしい。氷雨の言葉を聞くなり感極まった様子で、ミカエルは彼女の手を自分の両手で包み込んだ。これには氷雨もぱちくりと瞬きをして驚いてしまう。
彼女の手より二回りほど大きな男のそれに、ぎゅうっと力が込められる。不思議と痛いとは思えなかった。
「……ありがとう……!」
任務を始める前からこんなに礼を言われてしまうなんて、変なこともあるものだなあと氷雨は思った。でも、相手があんまり必死そうに礼を述べるものだから氷雨もつい笑顔を浮かべてしまう。
「いえ、こちらこそ宜しくお願いします」
大きな手を握り返す。自分よりずっと大きいのにそれはなんだか頼りなくて氷雨はちょっと笑えてしまった。