第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
ミカエルは、そんな氷雨を見て苦笑いをこぼす。
「最近、不穏な噂がある。強硬派の者が他のボス候補者を始末しようと動いているらしい。……そこで、私は君に依頼をしたというわけだ」
「なるほど。……すみません、私からの質問は許されますか?」
「もちろん。なんでも聞いてくれ。君には信用してもらいたいし、私も君を信用に値する人間だと思いたい」
そのための努力は惜しまない。と言って、ミカエルは微笑を浮かべる。
氷雨は、じっと彼の顔を見た後にティーカップをテーブルに置いて口を開いた。
「私を指名したのは何故ですか?」
「女性のほうが護衛だと気づかれにくいかと思ってね。ヴァリアーでは、君が一番強い女性だと聞いたんだけど……違うのかな?」
「まあ、あながち間違いではありませんけど」
「それはよかった」
にこりと笑顔を見せたかと思えば、ミカエルは急に深刻そうな表情になって視線を落とした。膝に乗せていた彼の手のひらが、ぐっと拳をつくる。
氷雨はその様子を静かに眺めていた。
「……何もなければ、それでいいんだ。無駄な争いはしたくない」
「だから、他の候補者の暗殺ではなく護衛を?」
「ああ。臆病者だと言われれば、それまでだけどね」
ミカエルはため息混じりに言葉を紡ぐ。眉尻を下げて笑う姿は、どこか寂しそうにも見えた。