• テキストサイズ

THE WORST NURSERY TALE

第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?


 ミカエルは、そんな氷雨を見て苦笑いをこぼす。


「最近、不穏な噂がある。強硬派の者が他のボス候補者を始末しようと動いているらしい。……そこで、私は君に依頼をしたというわけだ」

「なるほど。……すみません、私からの質問は許されますか?」

「もちろん。なんでも聞いてくれ。君には信用してもらいたいし、私も君を信用に値する人間だと思いたい」


 そのための努力は惜しまない。と言って、ミカエルは微笑を浮かべる。
 氷雨は、じっと彼の顔を見た後にティーカップをテーブルに置いて口を開いた。


「私を指名したのは何故ですか?」

「女性のほうが護衛だと気づかれにくいかと思ってね。ヴァリアーでは、君が一番強い女性だと聞いたんだけど……違うのかな?」

「まあ、あながち間違いではありませんけど」

「それはよかった」


 にこりと笑顔を見せたかと思えば、ミカエルは急に深刻そうな表情になって視線を落とした。膝に乗せていた彼の手のひらが、ぐっと拳をつくる。
 氷雨はその様子を静かに眺めていた。


「……何もなければ、それでいいんだ。無駄な争いはしたくない」

「だから、他の候補者の暗殺ではなく護衛を?」

「ああ。臆病者だと言われれば、それまでだけどね」


 ミカエルはため息混じりに言葉を紡ぐ。眉尻を下げて笑う姿は、どこか寂しそうにも見えた。
/ 225ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp