第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで
ーーぞくり。
全身を刺すような悪寒が、綱吉を襲った。清々しいほどに真っ直ぐな殺意と敵意。
バッと顔を上げて辺りを見回すと、こちらに背を向けているはずのベルフェゴールと目が合った。首だけで綱吉を振り返っていた彼は、口角を上げてニヤリと笑う。悪寒が強くなった気がして、綱吉はごくりと息を呑んだ。
そもそも、ベルフェゴールと沢田綱吉は、リング争奪戦以来まったくと言っていいほど接点がない。争奪戦のときだって、会話らしい会話すらしていないはずだ。なのに、どうしてここまで、あからさまな敵意を向けられなければならないのだろうか。
綱吉が目を逸らせないままでいると、ベルフェゴールは興味を失ったようにフイッと顔を背け、今度こそ氷雨と共に歩き去って行った。
「もう……なんなんだよ〜……」
綱吉は、がっくりと項垂れる。
ミルフィオーレを倒すため、という目的があったとはいえこの時代では共闘することが出来て、ヴァリアーと少しは和解できたような、溝が埋まったような気がしていた。けれど今、ヴァリアーが綱吉にとって未だ理解の及ばない集団であることを改めて突きつけられたようにも思える。この期に及んでもまだ、彼はマフィアというものに、好意的な感情を持つことが出来ない。
ーー絶対に、マフィアのボスになんかなるものか。
少年は、世界とボンゴレファミリーを救ったが、"ボンゴレファミリーのボスになる自分"だけは未だ肯定できないまま、自らの時代へと帰ることになる。