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THE WORST NURSERY TALE

第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで


「貴方がXANXUSを倒した翌日に、ご挨拶しました。それは覚えていますか?」


 綱吉は、自分の記憶を遡る。XANXUSを倒した、というのは多分リング争奪戦のことを言っているのだろう。その翌日に、そうだ、祝勝パーティをやって、それで。
 目の前にいる女性の笑顔と、記憶の中にいる女性の笑顔が重なった。
 綱吉は、目を見開いて驚きを露わにする。


「氷雨、さん……?」

「正解です。お久しぶりですね、綱吉さん」

「えっ、ちょ、待って。そりゃマフィア関係の人とは聞いてたけど……!!」


 ーーヴァリアーの一員とは聞いてないんですけど!!??
 綱吉は頭を抱えた。衝撃が大きすぎる。いや、そもそもヴァリアーと戦った後にヴァリアーの人とパーティーしてたとか、どういう状況だ。
 俄かに慌て出した綱吉の様子を眺めながら、氷雨はクスッと笑った。当人が一番気にしていない様子である。


「ご挨拶した時には、まだヴァリアーにいなかったんですよ。今は縁あってヴァリアーにいますけど」

「あ、そ、そうなんですか」

「私はボンゴレ寄りの人間ですし。いえ、ヴァリアーもボンゴレではあるので…うーん、説明しづらいんですが、とにかく今の私は綱吉さんの味方ですよ」

「それは、ありがとうございます……??」


 ニコリと氷雨が笑う。その笑顔に、もう一度綱吉はかつての彼女の面影を見て、思わず視線を逸らした。

(この人、すごい大人っぽくなってる……!!)

 フゥ太や雲雀達を見たときにも、10年の時の流れってすごいなあと思ったが、綱吉はそれを改めて実感するような心持ちだった。今の氷雨が何歳なのか分からないが、大人の女性と呼称するに相応しい様相で、なんと言うか、色気があるように見える。彼にとっては、縁遠い類の人種でもあった。
 思春期男子よろしく俯いてしまった綱吉を前にして、彼女は不思議そうな顔をする。


「どうかしましたか?」

「あっ!いえ、スミマセン。その、氷雨さん、前と雰囲気が変わってるから驚いちゃって」

「……この10年、色々とありましたから」


 そう呟いた氷雨の声は、諦観に満ちているように聞こえて、綱吉は慌てて顔を上げた。けれど、視界に入った彼女は先程と同じように笑っている。その笑顔からは何も見えない。
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