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THE WORST NURSERY TALE

第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで


 ベルフェゴールは苛立ちのままガシガシと頭を掻くと、不意にしゃがみ込み、氷雨を俵のごとく肩に担ぎ上げて立ち上がった。


「ひゃっ、なに」

「さっさと戻るぜ。カエルはボスのバトルが見てぇんだろ」

「それ持っていくつもりなんですか?」

「文句あんの?」

「いえ、単純に重くて邪魔そうだなーと思って」

「フランくん言葉選んで」

「この程度の荷物でオレの動きは鈍らねーよ」

「ベルも言葉選んで!?というか、私はここに置いていってくれていいから」

「あぁ?なにおまえ王子に口答えする気?」


 邪魔だの荷物だの胸にグサグサと突き刺さる言葉の数々に堪えきれず、氷雨が肩の上から降りようと身を捩る。
 が、当然そんなことをされてベルフェゴールが面白いわけがなかった。彼女の抵抗を片手で封殺した上で、彼はブラブラと揺れている彼女の左足をもう片方の手でぎゅっと握る。声にならない悲鳴とともに、びくりと氷雨の身体が跳ねて彼女の両手は縋りつくようにベルフェゴールのコートを握りしめた。


「〜〜〜っ、い、たぁ……」

「残った足も折られたくなけりゃ静かにしてろよ、しししっ」

「うぅ……はい……」


 目の前で繰り広げられるバイオレンスラブコメディに、フランは絶句した。女の真っ当な意見を捻じ曲げて苦痛で屈服させる男のなんと理不尽なことか。
 殺し屋としての氷雨の事は、今日少しだけ理解できたような気がしたが、男の趣味に関しては、これまでと変わらず全くもって理解できそうにない。彼から言わせてみれば、趣味が悪いなんてもんじゃない。


「ベルセンパイも甘いんだか酷いんだか分からないですねー……」

「うるせ。さっさと行くぞ」

「了解ですー」


 ベルフェゴールとフランは、ほぼ同時に地を蹴って移動を始めた。目指す先はボスの座する古城である。
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