• テキストサイズ

THE WORST NURSERY TALE

第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで


「っ、借りばっかり、貯まってくね」

「そりゃオレがお前に助けられる事なんか早々ないしね」

「そうなんだよねー……ベルが苦戦する相手を私がどうにか出来る訳がない……」

「わかってんじゃん」

「!?い゛っ」


 びくっと氷雨の体が跳ね上がった。ベルフェゴールの手が折れた左足を掴んだからだ。神経を直接刺激するような痛みを受けて目元に涙を浮かべながら、彼女はベルフェゴールを恨めしげに見上げる。三日月型に歪んだ口元は、とても楽しそうだった。


「うしし、イイ顔」

「痛っ……ほんと、趣味悪いなあ…」

「イヤならこんな怪我しなけりゃいーんだよ」

「簡単に言う……」

「センパーイ、持ってきましたー」


 戻ってきたフランの腕には、敵の落とした武器がいくつか抱えられていた。
 ベルフェゴールは、氷雨の足から手を離す。


「この辺りの木はみんな燃えちゃってたんで苦労しましたよー」

「周囲の様子は?」

「今のところ敵の気配はないですねー」

「そ。つっても、見つかんのは時間の問題だろーな」


 ベルフェゴールは、炎を纏わせたナイフでフランが持ってきた武器の柄を切断すると、氷雨の左足に添えて、コートの切れ端で結び固定する。世辞にも丁寧と言える手付きではなかったが、手先の器用さは生来のものなのだろう。あっという間に応急処置が済んでいく。
 その光景を、フランはぼんやりと眺めていた。


「迷惑かけてごめんね、フランくん」


 唐突に掛けられた声に気を引かれてフランが視線を上げると、氷雨が彼を見上げていた。申し訳なさそうに細い眉が八の字になっている。


「そうですねー、なんか全部ミーのせいにされてますし」

「事実だろーが」

「もうベル!ご、ごめんね」

「……まあいいですけどー。ついでに氷雨センパイのバトルも見られてラッキーでしたし」


 へ?と間の抜けた声を上げて目を丸くする氷雨を、フランは相変わらずの冷めた瞳で眺めている。

/ 225ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp