第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで
ラジエルは、この世に生まれ落ちた瞬間から成功を約束されていた。
王家の一族として生を受け、多くの人間にその生を祝福された。運動も勉強も、やってできないことは何もなかった。周囲にいる人たちは、こぞって彼を褒め称えた。
ラジエルは、国に、両親に、臣下に、才能にと、多くのものに望まれ、選ばれた人間だった。たった一人、血を分けた弟を除いては。
けれど、ラジエルは特段気に留めてはいなかった。彼にとって、自分より劣る出来損ないの弟は、自分が褒め称えられる為の道具でしかない。誰もが弟よりも自分を選ぶ。ラジエルは己の生に満足していた。
18年前のあの日、勝利の女神が己ではなく、ベルフェゴールを選ぶまでは。
「死に損ないが、偉そうなクチきいてんじゃねーよ」
「ええ、でも貴方はその死に損ないにすら思い知らせたいんでしょ?ボンゴレを、ヴァリアーをーーベルフェゴールを選んだから負けたんだ、って。子供の仕返しみたい」
「テメェ……」
「ベルフェゴールに負けたときから、成長できていないのね……可哀想な人」
「黙れってんだよクソ女が!!」
ラジエルは、氷雨の言葉を遮るように叫んだ。イライラする。なにも知らないくせに、すべて見てきたような口振りで話す姿が気に入らない。死に損ないのくせに、少しも恐れずに此方を見据えてくる態度に反吐が出る。
「テメーが言ってんのは、選ばれない人間の戯言だ。そりゃ言いたくもなるよなあ、アンタは"ヴァリアーの雲にすらなれなかった"んだからよ」
「……!!」
「アンタの指にある、ちゃちなリングと、オレの指にあるマーレリングの違いが全ての答えだ。選ばれる人間ってのは、最初から決まってんだよ」
「……だから、何」
「は?」
「私がヴァリアーリングの保持者に選ばれなかったから、なんだって言うの?」
氷雨は、キッと眉を寄せてラジエルを睨んだ。