第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで
ーーミルフィオーレ本部・パフィオペディラム。
ミルフィオーレファミリーのボスである白蘭は、周囲のモニターから入ってくる通信を聞き流しながら、ティータイムを楽しんでいた。彼の正面にあるモニターには、たったいま行われているイタリア主力戦の映像が流れていた。
「おっ、今回の氷雨チャンはちゃんと戦ってくれるんだ」
まるでスポーツの観戦でもしているようなノリで白蘭は楽しそうに声を上げた。
モニターには、6弔花であるラジエルに銃口を向けるヴァリアー幹部・鈴川 氷雨の姿が映し出されている。
「よっぽど強い匣兵器を開発したのかな〜。お手並み拝見だ」
「白蘭様は、あの女性を気に入っていらっしゃるのですね」
「うん、あの子おもしろいからさ」
傍に控える桔梗の問いかけに、白蘭はニコニコと笑いながら答えた。菓子袋からマシュマロをひとつ、手にしては指先で潰して弄ぶ。
「氷雨チャンの強さはさ、自分のこと弱いって思ってるトコにあるんだよね」
「事実、彼女はヴァリアーの幹部の中でも最も戦闘力が低いと評価されているかと思いますが」
「うん。でも、それは指標のほうが悪すぎる」
「指標、ですか」
「ハッキリ言って、今代のヴァリアー幹部が規格外なんだよね。基準にするには最悪。一世代前のヴァリアーで考えれば、氷雨チャンの実力は幹部クラスでも上から数えたほうが早いレベルだよ」
「……なるほど。比較上弱いとされているだけ、ということですか」
「問題は、本人もその指標を受け入れちゃってるトコなんだけどね〜」
ホントに厄介だよ、と続けた直後、白蘭は一瞬貼り付けたような笑顔を消した。鋭い眼差しがモニターに注がれる。
彼は、他のパラレルワールドで氷雨の有用性に目をつけ、ボンゴレからミルフィオーレへ引き抜いたことがある。コメータファミリーの存亡をチラつかせて、それ自体は殊の外上手くいった。彼女はボンゴレの者達に銃口まで向けてくれた。