第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで
状況は絶望的。
ベルフェゴールとフランが殺され、他の幹部が駆け付けることはない。氷雨は戦闘能力でいえば殺された2人よりも遥かに劣る。相手は二人。片方は6弔花。とても逃げきれる相手ではないし、見逃してくれる気もないだろう。
生き残るためには、ミルフィオーレに降るしかない。
「お断りします」
「…………へえ?」
彼女は、とうの昔に決めている。この黒いコートと盾を模した紋章を再び肩に掛けたその日から、敗北は己の死と同義。自らが決めた生き方で勝ち続ける事が、己の誇りであり覚悟だ。
負けたら死ぬ。けれど、逃げたりはしない。もう二度とーーそんな惨めなことは二度としない。
氷雨は、銃口をラジエルに向けた。真っ暗な闇夜にも似た瞳が、ニタニタと笑う男を静かに射抜く。その眼差しには焦りも動揺もなかった。
「私のボンゴレは最強なんです。負けを認めるなんて許せません」
バカな女。
ラジエルはたった一言、そう吐き捨てた。