第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
ようやく、彼は氷雨を視界に捉えると口許に弧を描いていつものようににんまりと笑った。
「じゃ、遊ぼーぜ。王子暇してんだよ」
「?……うん、いいけど。……あ、その前にお茶しない?これ貰ったから」
氷雨は抱えていた包みを見せて、ニコニコ笑っている。ベルフェゴールが「なんだよそれ」と口に出す前に、隣にいたルッスーリアがパンっと音を立てて両手を合わせた。ベルフェゴールが思わず口を噤んでしまったことは言うまでもない。
「あら、それって和菓子かしら?」
「せいかーい。大福っていうんだ、美味しいよ」
「ふーん、オレ和菓子って初めて食べるんだけど。口に合わなかったら、おまえ責任とれよ」
「聞きたくないけど、どうやって……」
「サボテンになって」
「!?やっぱり……!」
「もうベルちゃんったら!あんまりいじめちゃダメよ~」
「いじめてねーよ遊んでやってんだよ」
べーと舌を出してみせたベルフェゴールは、反省の色をまったく見せないどころか反省する必要も感じていないようだ。
ルッスーリアは「困った子なんだから」とため息を吐いているが、いじめられている側(らしい)氷雨は何故だか笑顔で楽しそうである。
「ルッス姉さん、リビング行ってお茶いれようよ」
「ええ、そうね。ベルちゃんは皆を呼んできてくれるかしら?」
「めんどいからやだ」
「もーそんなことばかり言って!」
「あはは、私が呼びに行ってくるよ」
だから、大福はよろしくね。
氷雨はそう言ってベルフェゴールに持っていた包みを差し出した。やっぱり笑顔である。彼は一瞬どうしようかと躊躇したが、気づけば「しかたねーな」と言って差し出されたそれを受け取っていた。
初めて食べた大福という菓子は、まあまあ悪くない味だった。