第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
何にせよ、面会の邪魔をすればスクアーロが煩くなることは目に見えている。ベルフェゴールは、再び舌打ちをすることくらいしか出来なかった。
「……そういや、氷雨ってなんでヴァリアーに来たわけ?あんなうっぜー家族がいんのに」
「うーん、私も詳しくは知らないわねぇ。氷雨ちゃん、家族のこと話さないし……」
頬に手を当てたルッスーリアは、氷雨に関する記憶を探ってみたが家族に関する話や入隊に関する話を聞いた記憶はまったくと言っていいほどなかった。それはベルフェゴールも同じだったようで、結局二人とも言葉をなくしてしまう。
「あれ、二人ともどうしたのー?そんなところで」
噂をすればなんとやら、沈黙を破ったのはひょっこりと顔を出した氷雨であった。ぱたぱたと二人に歩み寄ってくる氷雨は、大事そうになにかを抱えている。
ルッスーリアは彼女に視線を向けたが、ベルフェゴールは彼女から目を背けた。
「氷雨ちゃん!ちょうどあなたの話をしてたのよ」
「え、私の話?」
「そうなのよ。あのね、」
「あいつもう帰ったの?」
先程まで考えていた疑問を氷雨に投げかけようとしたルッスーリアの声を遮ったのは、ベルフェゴールの声だった。視線は相変わらず氷雨を捉えていない。
突然、横から話しかけられた氷雨は、ぱちくりと幾度か瞬きを繰り返した後に「うん、帰ったよ」と答えた。ルッスーリアは不思議そうな顔をしてベルフェゴールを見ている。