第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで
ーーイタリア戦線。
ミルフィオーレに対する世界規模の反攻作戦のひとつである。残存するボンゴレ本部が指揮を執ったイタリア戦線は、現時点でのボンゴレファミリーにおける最大の戦力を引っ提げた、実質の主力戦だ。
しかし、ボンゴレの反攻作戦を早期に察知していたミルフィオーレは、ボンゴレ連合軍を遥かに凌ぐ戦力を投入し、これを圧倒。数の暴力の前に、ボンゴレ連合軍はじりじりと後退を余儀なくされていた。
「報告いたします!ボンゴレ側に援軍が現れた模様です!」
「今更援軍だと?どこのファミリーだ?」
ミルフィオーレの指揮官は、部下からの報告に眉を寄せる。事前に掴んでいた情報では、周辺のボンゴレ同盟ファミリーは全て連合軍に組み込まれているはずだ。国境でも越えてこない限りは援軍など来るはずもない。
「それが……相手の容貌から、おそらく独立暗殺部隊ヴァリアーではないかと……」
「ヴァリアーだと!?何故それを早く言わなかった!!」
「い、いえ、ヴァリアーにしては、おかしな点がありまして」
「なんだそれは!?」
指揮官は、ドンと拳で机を叩いた。報告をする部下はびくりと竦みあがりながらも口を開く。
「ヴァリアーと思しき服装で現れたのは、たった一人なんです」
そう聞いて、指揮官は目を丸くした。そして、数秒の沈黙の後に声を上げて笑い出す。
ファミリー間の抗争に、たったひとりの援軍。馬鹿馬鹿しい!いくら最強と謳われる殺し屋だろうと、この圧倒的兵力差の前では悪足掻きにしかなるはずがない!
彼は一頻り笑ってから、部下に対して命を下した。
「前線を押し上げろ。そのヒーロー気取りを押し潰す。何としても殺せ!」
「しょ、承知しました!」
命じられた部下は頭を下げると、バタバタと慌ただしく部屋から出て行った。
指揮官は机の上の戦場図を眺めてニタリと笑う。負ける要素は何処にもない。あとは時間がすべてを解決してくれるに違いなかった。
ミルフィオーレの旗の下、大軍を率いてボンゴレを蹂躙する快感を味わってしまった男は気付かない。
それからたったの10分後に、ボンゴレではなく、己の命運が尽きてしまうことを。