第6章 【04-前編】零時の鐘が鳴るまで
彼女と入れ替わるように、今度はスクアーロが入室してきた。彼は真っ直ぐにルッスーリアのもとへやってくる。
「奴は、やっと休む気になったか」
「ちょぉっと渋ってたけどね。根は素直な子で良かったわ」
「そうかあ?」
スクアーロは、訝しげに眉を寄せた。
ルッスーリアの派遣にベルフェゴールへの任務斡旋……彼からしてみれば、素直というよりも面倒なことこの上ない印象である。文句の一つくらいは口から零れ落ちてしまう。
「大体、仕事のやり方が悪い。あいつ…下っ端にはきっちり仮眠取らせてたくせに、なんで自分が寝る時間は考慮してねぇんだ!?」
「まあまあ…あの子昔から、そういうところあるじゃない?お国柄かしらねぇ、ジャポネーゼって仕事一辺倒が多いみたいだし」
「俺は、そういう人種や環境のせいにする思考は好かねぇ」
「はいはい、わかってるわよ〜」
ルッスーリアに宥められ、スクアーロはチッと舌打ちをした。この男はどうにも年若い奴らの擁護をしたがって駄目だ。
「ベルもそうだが……そろそろぺーぺーからランクアップして貰わねぇと俺らが困るぜぇ」
「ウフフ、そうね〜」
そうは言っていても、実際に小言が必要なくなったら寂しく思うんでしょうに。
ルッスーリアは、そう言いかけて、言葉を呑み込んだ。