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THE WORST NURSERY TALE

第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?


 俄に、周囲が騒がしくなってくる。扉を開閉する音。家具が倒れる音。廊下を走る音。銃声。悲鳴。さまざまな音が混ざりあって、不協和音を奏でる。
 ガラッと近くで窓を開ける音を聞いて氷雨は銃を構えた。狙いを定めて発砲するまでにかかる時間はほんの数秒だ。
 二階の窓から逃げようとした男は、そのまま地面に落ちて動かなくなった。その後も氷雨の放つ銃弾は邸から出てくる人間を確実に仕留めていく。
 しかし、逃げ出してくる人間の数は多いうえに彼らも無能ではない。外に敵がいることに気付き、それぞれの武器で応戦してくる。


「ちょこまかと……」


 邸内にいる人間には銃弾を当てにくい。壁という障害物のせいで、窓からしか相手を狙うことが出来ないからだ。無論、長く邸内に留まれば内から攻撃を仕掛けているスクアーロ達に出くわすことになるのだが、なにぶん広い豪邸である。スクアーロ達の進撃ルート次第で遭遇までの時間は大きく変化するだろう。
 ならば、自分の仕事は相手を邸内に留めておくか始末してまうかの二択――氷雨はそう判断した。どちらにしても、応戦することが最善の策だ。
 相手は、三階に五人。二階に三人。


「氷雨です。ルッス姉さん。東側、早めに来てもらっていい?」

『はいはい、了解よー。すぐに行くわね!』


 三階を担当するルッスーリアに連絡をしながら、氷雨は銃のカートリッジを入れ換える。三階と二階の人影めがけて数発の銃弾を撃ち込めば、相手は外の様子を窺っているのか、少し静かになった。
 ほどなくして、ルッスーリアが東廊下にたどり着いたことを氷雨は視認する。壁に隠れていた者達も内部の敵に気づくが、反応は遅い。たった一度、銃のトリガーを引くことさえ叶わずにルッスーリアの攻撃を受けて倒れていった。
  その流れるような戦い振りに対する感嘆か、はたまた危機を脱したことによる安堵からか、氷雨は小さく吐息をこぼす。そして、再び銃を持つ手に力を込めた。
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